精神科ではたらくフリーライターのブログ

閉鎖病棟の看護助手兼フリーライターが日夜カラダを張ってお届けする、メンタルヘルスのお役立ち情報です。

【精神科でのコロナ対策】閉鎖病棟に空気清浄機が一台もない理由とは?

「空気清浄機」の優先順位はどの程度なのか?

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空気の入れ替えでは「換気」にかなわない

昨日5月12日は、看護学の祖フロレンス・ナイチンゲールの誕生日でした😊

 

ナイチンゲールと聞いて思い出すのが、彼女が著した名著「看護覚え書」。第一子誕生のお祝いに、職場の看護師さんからプレゼントされて読んだことがあります。

 

今回、久しぶりに本棚から引っ張りだしてみましたが、本書を読んで改めて感じるのは、その該博さと、すぐれて理知的な筆致。

 

徹底した現場主義に加え、統計データを活用したことで「学問としての看護」を飛躍的に成長させた手腕はお見事というほかはありません。

 

中でもナイチンゲールが繰り返し主張しているのが、「清浄な空気」の大切さ。

 

今の状況にも通じるこんな記述を見つけました。

 

患者にとって最も必要なもの。それはいつでも新鮮な空気です。 

もしあなたが、室内でも戸外でも、患者にいつも良い空気を吸わせ、しかもけっして彼らのからだを冷え込ませないならば、あなたは優れた看護師なのです。

 

 これは、精神科の閉鎖病棟ではたらく看護助手のわたしにも深くうなづける内容です。

 

なぜなら、患者さんを含めて一般人はとかく「空気清浄機」や「エアコン」などの家電に頼りすぎる傾向があるからです。

 

 その背景にあるのはおそらく、外の空気は汚れているという思い込みでしょう。

 

コロナウィルスが出現する前から、とかく都会の空気の汚れは社会問題として扱われてきました。

車の排気ガスや光化学スモッグ、花粉症、黄砂、各種ウィルスにPM2.5など、枚挙にいとまがありませんね。

 

できるだけ外から有害物質を持ち帰らないようにし、帰宅後は空気清浄機をつかって家の中をクリーンに保ちましょう。そんな宣伝文句と共に各社がエアコントロール製品を次々に開発しています。

 

そうしていつしか、換気を恐れる心理的な下地ができあがってしまいました。

 

けれども、今回のコロナウイルス騒動で明らかになったことは、空気清浄機を使ってもウィルス感染は防げないということ。

 

空気を完全に入れ替えられなければ、予防効果はないのです。

 

そして、空気の入れ替えという点においては、窓を開け放つ換気に優る方法はありません。

 

 

閉鎖病棟なのに空気清浄機が一台もない?

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わたしが勤務する精神科の閉鎖病棟には空気清浄機が一台も置かれていません。

 

その理由は明白。

 

広大な面積の病棟内では、空気清浄機が何台あっても足りないからです。

 

また、病院のクリーンルーム(オペ室)でもない限り、外部からの微粒子は常に入りこんでいることがデータから分かっています。

 

つまり、密閉された小空間でもなければ、空気清浄機のパフォーマンスは発揮されないわけですね。

 

また、密室の空気をコントロールする発想には、部屋の住人みずからが空気を汚しているという視点が欠けています。

 

たとえば、大部屋で生活する患者さんの元へ行くと、エアコンにより室温は快適でも、空気の質がひどいことが多いです。

 

これは、定期的な空気の入れ替えを嫌がる患者さんがとても多いため。密閉空間で活動すれば、部屋の空気はかならず淀んでいきます。

 

そして、たとえ空気清浄機を使ったとしても、決して新鮮な酸素の供給はしてくれません。

 

こうした環境では、一度誰かが体調を崩すとあっという間に同室者が共倒れしてしまいます。

 

つまり、室外の空気汚染をおそれるよりも、室内の空気汚染のほうがよほど身近な危機といえるのです。

 

 

「換気」「共用部の消毒」「清掃」の継続こそが大事。 

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コロナウイルスのおかげといえるのは、換気を嫌がる患者さんたちがようやく協力的になってきたことです。

 

それにより、以前よりも病棟内の空気がずっとさわやかで清潔になりました。

 

けれども、 「手洗いうがいとマスク着用の徹底」はなかなか難しいのが現状です。

 

なぜなら、患者さんによっては、手洗い場に液体せっけんを置くと飲んでしまうことがあるため。命にも関わるリスクのため、手指の消毒の徹底は不十分だといえます。

 

また、マスクの数も不足しているため、患者さんにまで支給する分がありません。スタッフですら、「1勤務1枚まで」という使用制限があるぐらいですから。

 

たとえ枚数が足りていたとしても、咳エチケットへの意識の低さはなかなか変えられないでしょう。

認知症を発症されている方などは、コロナウイルス自体を知らないからです。

 

そこで、スタッフが気をつけているのが共用部の消毒と清掃。

 

「ステリプロ」という名の次亜塩素酸水を使い、手すりや椅子の背もたれ、テーブルなどを毎日数回、念入りに消毒していきます。

 

やむを得ない外出の際も、帰院時にはかならずステリプロによる手指消毒をおこないます。

 

このように、感染症に対して決して有利な条件が整っていない精神科ではありますが、なんとか発症者ゼロを継続できています。

 

まとめ

室内の空気を清浄に保ちたいのであれば、空気清浄機よりも換気のほうが重要であることがご理解いただけたでしょうか?

 

空気清浄機を利用される場合も、十分な換気と組み合わせる視点をもっているといいですね✨

 

今回は、生活スタイルを変えたり、持ち物を増やさなくても危機管理は十分に可能であることをお伝えしました。

 

現場でのやり方が少しでもご参考になれば幸いです😊

 

それではまた!

たろけんでした。