精神科ではたらくフリーライターのブログ

閉鎖病棟の看護助手兼フリーライターが日夜カラダを張ってお届けする、メンタルヘルスのお役立ち情報です。

大人になった今こそ読みたい。『まんが人物伝』シリーズがメンタルを癒やす?!

「普遍の価値観」に触れることで”安心感”が生まれる。

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距離感が遠すぎて、「一生無縁」の人物だと思っていたものの。

 

 たろけんです。

連日、”コロナうつ”からの回復に効果的だった情報をお伝えしています。

 

今回は、まんがで読む偉人伝シリーズがなぜ”うつ”に効くのか?というテーマでお送りしたいと思います。

 

 

 何のために働いているのか、わからなくなったら。

コロナクラスターによる長いストレスに晒され続けた2ヶ月間。

 

外部からは「医療従事者の皆さん、ありがとう。」と期待されている中、その現場は実に人間臭いドラマに満ちていました。

mental-hpk.com

 混乱に乗じてコロナ病棟から逃げ出すものや、どさくさ紛れに敵対する人間の足をひっぱり出すもの。

土壇場を迎えた人間がどんなふるまいをするのか、しかとこの目に焼き付けた日々でした。

 

ところが、そんなストレスにいつの間にかメンタルを蝕まれていたわたしは、突如うつ状態に陥ります。

 

そして、「この仕事って、一体なんのためにしているんだろう?」

と虚無感にさいなまれていったのです。

 

こども向けの「まんが人物伝」にメンタルを救われる

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そんな時にふと手にとったのが、小学生の娘にせがまれて買った

『角川まんが人物伝シリーズ』でした。

 

最初に手にとったのは、アルフレッド・ノーベル。 

 あのノーベル賞の創設者であり、世界の産業発展に大きく寄与したダイナマイトの発明者です。

 

頭が混乱してロクに口もきけない中、パラパラと本をめくり始めたわたしはいつの間にか彼の人生にのめり込んでいました。

 

 純粋に詩を愛する少年がやがて発明家となり、人類にとっての「プロメテウスの火」を手にしてしまった苦悩。

 

愛する家族をダイナマイトの爆発事故で失い、「死の商人」と忌み嫌われ、それでも人類への貢献を続けた不屈の人生に心を動かされたのです。

 

*なんと!以下のリンクでノーベルの人物伝が全ページ無料公開されてます✨

ご興味のある方はぜひお読みください。

kadobun.jp

 

「畏敬の念」を抱くと、うつの進行が抑えられる

 気づけば、ノーベルの伝記に加え、「マザー・テレサ」「ウォルト・ディズニー」と、次々にまんが人物伝を手に取っては読みふけっていました。

 

後日知ったことですが、体内の炎症とうつの発症には密接な関係があるとの研究結果が出ているのだそう。

 

鈴木祐 著『最高の体調』には、次のような記述があります。 

鬱に苦しむ患者のなかには抗うつ剤が効かないケースがよく見受けられます。

もともとうつ病でセロトニンやドーパミンが少ない人は全体の4分の1にも満たず、脳内ホルモン仮説では説明がつきません。

 

その代わりに注目され 始めたのが「鬱病の炎症モデル」です。人体がなんらかのダメージを受けてサイトカインという炎症性の物質が分泌され、脳の機能に影響を与えるという考え方です。『最高の体調』より

 

そして、体内の炎症を抑える方法のひとつに「畏敬の念」を抱くことが挙げられています。

 

データを分析した研究チームは、ある感情を体験した回数が多い者ほど、心理的な不安や体内の炎症レベルが低いという事実に気づきました。その感情が「畏敬」です。

 

心理学でいう「畏敬」とは、なにか自分の理解を超えるような対象に触れた際にわきあがる、鳥肌が立つような感情を指します。

 

「でも、畏敬の念を抱くって、どゆこと?」となる方が大半かもしれませんね。

わたしも一読した時はちょっとわかりにくいなぁ、と思ったからです。

 

ですが、この場合の「畏敬」の対象は、上記のように感じられれば何でもいいのだそう。

 そして今回私が感じたのが、”歴史上の偉人”に抱いた畏敬の念だったのでした。

 

「ふつうじゃない人生」に垣間見える、普遍性。

 そもそも、偉人というのは「ふつうじゃない人生」を歩んだ人でもあるわけです。

いい意味わるい意味ふくめて、およそ常人には経験できない出来事が人生に次々と降りかかります。

 

でも。だからこそ、全人類共通の課題である

「人はいかに生きるべきなのか?」

という永遠の命題に、形を変えては向き合わされることになるのです。

 

主人公である彼らが時に打ちのめされ、絶望しながら、それでも立ち上がろうとするその姿。

立派な功績を残した事実よりも、どん底から這い上がってくるその思いに人は心を打たれるのですね。

 

たとえば「マザーテレサ」という女性は、医療や介護の現場で働く者にとって生涯追いつけない巨人ともいえる存在です。

 

マザーは、どんなに不潔な身なりの患者さんに対しても

「あなたに触れることは神に触れていることと同じ。だから、お礼が言いたいのはこちらの方です。」

と、言い切ります。

 

これぞまさに、「コペルニクス的転回」ではないでしょうか。

 

自分のメリットを優先すれば「いい患者さん」「悪い患者さん」という区別が生まれ、その結果、他でもない自分自身が苦しむことになるからです。

 

徹底した相手目線で世の中を見ることで、自分を取り巻く世界はいかようにも豊かにできることをマザーは示唆したのです。

 

自分にはとてもできない、のだけれど。

わたしもそうですが、「こんな自分じゃとてもムリ。」と自己評価を下したら、”崇高な”価値観からはできるだけ距離を取るようになりますよね。

 

 つまり、たとえマザーテレサが「神に触れていることと同じ」と言っても、やはり不潔な患者さんには触れたくない自分がいる。

 

でも、心のどこかに「マザーテレサは、あの時こうしたんだっけな。。」という一筋の光さえ残っていれば、今の自分にできることは何かを考えるきっかけになります。

 

仕事に復帰した時、この感覚が生まれたことで救われたような気持ちになりました。

 

 人はそれぞれの「物語」を生きている

  看護の世界には「ナラティブ(物語)」という回復へのアプローチがあります。

 

人間というのはそれぞれの「物語」を生きている。身体症状の回復もさることながら、自分にとっての物語を取り戻すことが本当の回復につながっていく、という考え方です。

 

その点から見れば、偉人たちの人生は普遍的な価値観に貫かれていることがよく分かります。

 

現代に生きるわたしたちは、日々さまざまな価値観に踊らされ、ぶれ続けるのがふつうです。

でも、それ故に本当の安らぎはなかなか訪れないもの。

 

「まんが人物伝」に登場する偉人たちは、決して飛び抜けた能力を持った天才などではなく、地味な日常をコツコツと磨き上げていった結果、普遍的な領域に達した人たちだといえます。

 

だからこそ、彼らの偉業は輝きつづけるし、その生き方も決して色褪せることがないのです。

 

そんな「まんが人物伝」シリーズ。大人だからこそ手にとってみたい一冊だと思います。

 

それでは今日はこの辺で。

たろけんでした😊