そのストレス解消法が、かえってメンタルを蝕んでいた!
たろけんです。
今回は、”コロナうつ”の「原因特定」編と称して、わたしがうつ状態へ至ることになった「ライフスタイル」に関する原因を追求していきたいと思います。
”変えられる要素”だけに手をつけよう
なぜライフスタイルなのか? もっと直接的な要因を取り除かなきゃダメなのでは?
と思われる方も多いことでしょう。
ですが、メンタルにショックを受ける「内容」は人それぞれ違う上に、カンタンには取り除けないことがほとんどですよね。
たとえば「この同僚が死ぬほどイヤだ!」と思っても、即刻辞めさせることなどまず無理というもの。
だからこそ、変えられない要素ではなく、自分次第で変えられる要素に手をつける必要があるというわけです。
そして、ショックを受けた後にすぐに回復に向かえるのか、それともズブズブとさらなる深みにハマっていくかは、あなたのライフスタイルと密接な関係があるのです。
「超正常刺激」こそが脳疲労の原因だった
前回の記事では、わたしがメンタルヘルス版「家庭の医学」と呼んでいる2冊『最高の体調』と『心を壊さない生き方』を一気に再読したお話をしました。
面白いことに、通常時に読むのと切羽詰まって読むときとでは、情報としての重みがまったく違うんですね。
以前は「ふーん、そうなんだ。。」ぐらいに読み流していたのが、今回は
「うわ、そうだったのかぁ〜!!!」
ぐらいに違いました(笑。
具体的にどの情報なのかといえば、それが『最高の体調』で紹介されている「超正常刺激」に関するもの。
著者の鈴木祐氏は、”ハマるとやめられない「超正常刺激」の正体”の章で以下のようにそれを紹介しています。
超正常刺激とは、動物行動学の父コンラート・ローレンツ氏が発見した現象で、自然環境にはないものに対して本能が反射的に作動してしまう状態を意味します。
中略
わかりやすい例はポルノでしょう。人類が進化した環境にはポルノなどなかったため、人間の脳は簡単に興奮してしまいます。この状態が続くと脳は単純な刺激に満足できなくなり、さらなる興奮を求めて暴走を始めます。
ポルノの他に紹介されている「超正常刺激」には、ジャンクフードやネットサーフィン、SNS、ビデオゲームなどがあります。
要するに、一万年前から何も変わっていない人間の脳にとって、”新しすぎる刺激”はすべて「ハマるとやめられない」可能性があるということ。
わたしの場合、不調につながったライフスタイルの原因はまさにこれだ!と目が拓く思いがしました。
疲弊した脳をさらに酷使していた「エロ」と「暴飲暴食」
コロナクラスター下の病棟ではたらくストレス。これは通常時の比ではありません。
それなりに大変なことが起きる平時であっても、業務の大半は予想の範囲内のため自動運転モード。ところが、今回のような緊急時にはルーティンと呼べるものがほぼ消失します。
そのため、まるで「ブラックな職場の初日」のような状態が延々とつづくのです。
これはキツいですよね。。
そうなると、職場を離れた時にどうなるか?多くの場合、異常なストレスを相殺してくれる”癒やし”を探し求めることになります。
前回書いたとおり、わたしにとっての最強のストレス解消法は、夜勤明けの”スパ”でした。
「露天風呂」→「サウナ」→「美味しいランチ」→「静かな仮眠室でぐっすり眠る。」
これで多くのストレスが解消されていたのです。
mental-hpk.com この選択肢がコロナで封印されたことで、わたしはすぐに追い詰められることになりました。
そして向かった先が「エロ」と「暴飲暴食」だったのです。
上述の引用にある通り、わたしの脳はこれまでの刺激では満足できなくなり、さらなる興奮を求めて暴走し始めることになりました。
ヒマな時間を見つけてはスマホでエロ動画などを検索するようになり、ちょっとした仕事の休憩時間でさえ、それを観るようになりました。
同時に、食生活も乱れていきました。
「こんなに大変なんだから、ちょっとぐらい好きにさせてくれ」といった心境になり、ファストフード店やコンビニなどで目についたものを躊躇なく食べるようになりました。
また、ストレスを感じると甘い飲み物を大量に飲むようになりました。
いわゆる清涼飲料水なわけですが、これらを飲んでいると美味しいを超えて、「気持ちいい」と感じている自分に気づきました。
脳はまさに「超正常刺激」の連続投下で興奮しっぱなしです。
生活リズムが乱れ「無礼講」状態に。
また、本来なら脳も体もゆっくりと休めなければならない夜勤明けの行動も、さらなる負担をかけていました。
直帰すると家に妻や子どもたちがいるため、漫画喫茶でシャワーを浴び、PCでまたエロ動画を観る。睡眠不足で脳も体もクタクタ、「もうやめてくれ!」と言っているのがわかるのに、です。
まるで、安らぐ場所を失ったために刺激を求めつづける、「快楽ゾンビ」のようでした。。
ここで見逃してはならない点は、最初はこれらの行動を「ストレス解消法」として意識的に行っていたことです。
ところが、脳にとってこれはまさに過重労働。
疲れ切ってやっと休めると思ったところに、さらなる情報処理が求められ、いつ果てるともしれない刺激にさらされ続けていたのです。
その結果、睡眠の質も低下し、疲れがなかなか取れない。胃腸の調子もすぐれない。
さらに、エロ刺激で常に奮い立たせられていますから、ムダ打ちで体力も削られていきます。
後になって同僚から聞きましたが、この時期、「たろけんさん、最近見た目がすいぶん老けたなぁ。。」と思われていたようです。。ww
わたしは「超正常刺激」の本当の怖さはここにあると感じます。
体と心の疲れを癒やす目的が、逆にそれらを壊すことに拍車をかける。
まさに現代社会の矛盾そのものといえる気がします。
理想的なストレス解消法も無意味化されていく
それでは、この時期にメンタルにいいことを全くしなかったかといえば、そうではありません。
「自然の中で過ごす」ことがストレス解消には最適なことを知っていたため、盛んにピクニックに出かけていました。
太陽の光を浴び、緑を眺め、美味しいランチを食べながら深くリラックスをする。
はた目には理想的な休日を送っているように見えたと思いますが、その効果は先の行動によってことごとく打ち消されていったというわけです。。
脳内に報酬系ホルモンと呼ばれるドーパミンが垂れ流され、「もっともっと」が果てしなく繰り返されたある日、まるで警告のように「正気を失う夢」を見たのでした。
「エロサーフィン」を一週間やめたら、症状が劇的に落ち着いた。
心身の不調が「超正常刺激」から来ていることに気づかされたわたしはまず、「エロサーフィン」をグッと制限することにしました。
スマホにダウンロードしたエロ関連のファイルを思い切ってすべて削除し、Googleのセーフサーチ設定を行って不適切な検索結果が表示されないようにしました。
その結果、一週間もするとみるみるうちに脳内の霧のようなものが晴れていきました。
同時に食生活の改善、運動、その他にもさまざまな対策を取ったのですが、最大の効果を上げたのはやはり、エロ断ちだったのです。
わたしは以前、依存症治療の専門病院でリハビリスタッフ(作業療法)をしていたことがあります。そのため、依存行動からの回復に少し詳しいのですが、その難しさもイヤというほど知っています(笑。
脳内に一度依存が形成されてしまうと、一時的な気の緩みでカンタンに元に戻ってしまうからです。
そのため、ハマっている対象を完全に絶とうとするのはあまり現実的ではありません。
「酷使している脳をしばらく休ませてあげよう」ぐらいの気持ちで、まずは一週間だけ離れてみる。
そして、その間にあらわれる心身のポジティブな変化をできるだけたのしむ。それぐらいのゆるい節制こそが実質的には一番効果があるものです。
同様の症状に悩まれている方は、ぜひご参考にしてみてください。
「酒」「ゲーム」「ギャンブル」”依存性の強い”気晴らしに要注意!
わたしの場合は「エロ」と「暴飲暴食」に走ったわけですが、 「超正常刺激」は日常の至るところに潜んでいます。
カンタンに言うならば、世にあるエンタメのほぼ全てがこの仕組みを利用しています。だからこそ、気晴らしの内容には十分に気をつけたいものです。
精神科医療においても「アルコール依存」「ギャンブル依存」はメジャーな精神疾患ですし、ビデオゲームやスマホゲームが脳内に依存を形成することも知られるようになりました。
イヤなことがあった時の気晴らしにこれらを使うと、一気に依存形成が加速します。
どうぞご注意ください。
脳にも適切なクーリング期間を。
これまで「超正常刺激」の恐ろしい側面を強調してきましたが、救いがあるのは”ハマったら一巻の終わり、というわけではないことです。
『最高の体調』では、それについて次のように解説しています。
幸いにも、私たちの脳は柔軟性が高いため、超正常刺激のダメージは完全に復旧できることがわかっています。
精神科医のノーマン・ドアッジによる研究では性欲障害の患者がしばらくポルノ視聴を止めたところ、興奮状態だった神経ネットワークが徐々に弱まり、元の状態を取り戻せたといいます。
ドラッグ中毒者の治療と同じように、いったん超正常刺激を断つ期間をつくればいいのです。
自分の意志ではコントロールが難しいぐらいハマってるな。。と感じたら、脳にも適切なクーリング期間をもうけて神経ネットワークを正常化する。
この意識があるだけでも、うつの深みに沈んでいくことを避けることができます。
次回は、正しいストレス解消法をできるだけ多く身につけるべき理由、というテーマで書いてみたいと思います。
それではまた。
たろけんでした😊